春分グローバルフォーラムをより深く味わうための20冊(前編)〜あわいの世界、リジェネラティブなビジネスと微生物、東洋哲学と中動態ほか〜

国内外から200名を超える方々にご一緒いただき、大きな反響をいただいた春分グローバルフォーラム「あわいから生まれてくるもの -人と人ならざるものの交わり-」


先日から販売スタートしたアーカイブ映像と合わせてお楽しみいただくために、また、フォーラムにご参加いただいた方がこれから旅路をより深めていくために、各セッションと絡めておすすめの本をいくつかご紹介します。



あわいの世界


人と自然。
人と人ならざるもの。
生命と非生命。
そして、わたしと世界。
 
分かれているようで、混ざり合う。
一体となっているようで、少し違う。
境界があるようで、あわいを漂っているようで。
(フォーラムHPより)

まずは、今回のフォーラムコンセプト「あわい」についての本をいくつか。

フォーラムのコンセプトページでも触れた3冊です。それぞれ、身体性、生命哲学、そして生態学/人類学の視点などから、白黒明確な線引きをするのではない、二元論を乗り越えた新たな世界認識に迫っています。



・あわいの力 「心の時代」の次を生きる / 安田登

能楽師の安田登さんは、日本文化において境界というのは実はゆるやかであいまいなものだったのではないかと著書「あわいの力」の中で書かれています。例えば、家の内と外があいまいな空間である縁側。あるいは、「考える」という一見自分が主体にみえる行為でさえ、その語源「か身交う」が示すように、身体という「媒介・あわい」を通じて環境や他者と「交わる」行為であったのだといます。



・<あいだ>を開く レンマの地平 / 木岡伸夫


風土論と生命哲学を専門とする哲学者・木岡伸夫先生は著書「あいだを開く - レンマの地平」の中で、「人間と自然の〈あいだ〉を認めない二元論的論理(ロゴス)を拠り所としている限り、近現代社会が直面する環境危機は乗り越えられないのではないか」と語り、「地球規模の生態学的危機の根底には、人間による自然支配という単純な問題ではなく、それと同時か、それに先立って、人が自然を支配するように他人を支配し、他人を支配するように自然を支配するという、幾十にも錯綜した支配ー非支配の構図がある」と指摘しています。


・熊楠の星の時間 / 中沢新一 明治時代の民俗学者・粘菌学者 南方熊楠の思想について人類学者中沢新一さんが著した本。生と死を切り離すことのできない生きた哲学概念としての粘菌の在り方に、生命の本質を見出そうとした南方熊楠の世界への入門書としておすすめしています。



フォーラムに参加いただいた方からは


「どれだけ自分が作り出した境界線に閉じ込められていたのかに気づかされた」

「日本人は曖昧さのある民族で、白黒はっきりさせない優しさを持っているという星野先達の話にはっとした」

「多種多様なセッションがありながら一貫してあわいに迫っていたのがよかった」

「あわいという哲学・思想の理想論に終始しやすい領域を、実際にかたちにして実践されている方々のお話に勇気をもらった」

「AWAIは欧州でもこれからの人間存在の認識をアップデートしていく上で大変重要だと感じた」


などあわいというテーマについても多くの声をよせていただきました。




リジェネラティブなビジネス・組織・リーダーシップ

続いて、人ならざる生命や自然環境と共に繁栄していくビジネスやリーダーシップの在り方について。


・Regenerative Leadership -The DNA of life affirming 21st century organization-


DAY2の「リジェネラティブ・リーダーシップ - 自然の叡智と再生型のシステム変容 - 」のセッションに登壇したGiles Hutchins氏の共著書。自然の叡智から学び、21世紀型のシステム変容を促すリーダーシップのあり方や実戦に迫った本でず。


英語ですが、Ecological Memesでも読書会を行ったり、リジェネラティブリーダーシップをテーマに森でプログラムを行ったりと探究・実践を深めてきた本です。内容はこちらでもレポートしています。翻訳PJTも進めていますので、ご興味ある方はお知らせください。


関連本としては、Regenerationの潮流の牽引者の一人Daniel Christian WahlによるDesigning Regenerative Culturesなどもおすすめです。






また、土に還るおむつを通じたリジェネラティブなエコシステムづくりを仕掛けるベルリン発スタートアップDYCLEの松坂さんをお招きした「リジェネラテイブ・ビジネス - 人と人ならざる生命の循環と再生 -」のセッションにてバクテリアや菌類などの話がでましたが、微生物の世界への入り口という意味では下記もおすすめです。


・土と内臓 -微生物がつくる世界- / デイビッド・モンゴメリー


この本は、DAY4のクロージングに出演いただいた松島さんが編集長をつとめるWIRED 日本版の最新刊でもインタビュー記事と共に紹介されています。

欧州では生物学とデザインのダブルメジャーの学生が増えているという話を聞きましたが、循環・再生型のビジネスをしていく上でこのあたりの分野融合はますます重要になってきていますね。





東洋哲学と中動態

これについては、なんといっても大変大きな反響のあったのが、初日の井庭先生によるキーノート・セッション「人と自然が共に繁栄していく創造社会 - 中空、混沌、無から立ち現れるもの」でした。


エゴやコントロール、対象と切り離された客観的な観察者の立場をを手放した先にひらかれていく無我の創造の世界を、主客未分、中動態、集合的深層意識、混沌、感じること、現象学的還元などのキーワードをつなぎあわせながら鮮やかに伝えてくださいました。


Chiharu KaiさんによるGraphic Recording


井庭先生のセッションをきいてから下記の2冊を読んでみると、一味も二味も違った世界をみることができるのではないかと思います。


・意味の深みへ: 東洋哲学の水位 / 井筒俊彦


東洋と西洋の思想の融合の先駆者といえばまず出てくるのが井筒俊彦さんですが、フォーラムセッションでも話があった意識の深層や、空・混沌・道といった東洋哲学思想に関する大変示唆深い著書/訳書が多く出ています。入り口には本書をおすすめします。井庭先生が引用されていた「スーフィズムと老荘思想」もぜひ。



・森のバロック / 中沢新一


人類学者 中沢新一さんが南方熊楠の世界に深く迫った本。生命システムの内側に入り込み、自然科学と仏教哲学の融合によって新たな学問を切り拓こうとした南方熊楠の思想哲学は、「不思議」という言葉に見られるように華厳教にも強く影響を受けており、「無我の創造」「内部から観る」「存在の声を聴く」「自身が生命の測度となる」という深い創造の原理とも共鳴します。





また、中動態といえば「中動態の世界/國分功一郎 」「<責任>の生成 / 國分功一郎・熊谷普一郎」など責任や倫理と関連づけて語られる印象が多いかもしれませんが、創造という文脈では井庭先生も紹介されていた「芸術の中動態―受容/制作の基層」/森田亜紀」が詳しいです。


責任や意志、倫理の話と、芸術や創造の話は別々のようで、実は根っこでつながりあっており、創造という行為は場への応答可能性(Responsibility)と捉えることができるのではないでしょうか。これは、井庭先生の植物の全体性の話や主体自身が場になっていく感覚というのともつながりますし、川喜田二郎さんのいう真に主体的な状況、すなわち全体状況がそうさせるからやらざるを得ない状況であり、創造行為における受動的側面であるということができるのかももしれません。


なお、井庭先生のセッションについては、花道家・山本郁也氏が所感を記事にしてくださっていますのでこちらもあわせてご覧ください。

花の声・創造システム・シンクロニシティ——Ecological Memes Forum 2021での井庭崇の講演「人と自然が共繁栄していく創造」に対する所感



まだまだたくさんありますが前編はこの辺で。生態学や風土学、ポスト人新世に関する本などは後編にてご紹介できたらと思います。


***GW期間セール中***

春分グローバルフォーラムのアーカイブ映像の購入はこちらから