PJT事例:水循環と人の動的な相互作用を紐解く「大山流域動態図」制作プロジェクト(2024年)
- 19 時間前
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鳥取県の奥大山自然文化協議会様および大山の地域事業者の皆様と共に、Ecological Memesで制作させていただいていた大山流域動態図が完成しました。

プロジェクト背景
Ecological Memesではこれまで、あいだラボフィールドワークとして、大山での初回のツーリズム・プログラムを共同開催(2023年6月)させていただいたことをきっかけに、大山山麓に位置する江府町の「水の循環フォーラム~水は地球のことば~(2024年2月)」への登壇や、企業研修の実施(3年連続開催)などをさせていただいてきました。
今回の流域動態図制作プロジェクトでは、大山の豊かな水循環の構造を紐解き、可視化することで、地域の方々やプログラム参加者が、身体感覚やコンセプトだけでなく、奥山から海へとつながる生態学的循環や地域の歴史文化に関する具体的な理解を深め、共に協働していくためのツールづくりにチャレンジしました。

大山流域動態図とは?
大山流域動態図は、 大山の豊かな水循環を、人と自然環境が相互作用し合う動的なつながりとして紐解き、可視化したものです。地下の伏流水や海底湧水を含めた水循環や地質、樹木や菌糸、苔、岩、土中微生物など多様な存在が相互に作用する生態系、また、地域に伝承されてきた古来からの知恵や営み、渡来の民やたたら製鉄、ヤマタノオロチといった地域の歴史や文化神話など様々な分野・領域を結びつけ、統合しています。
また、付属する13枚の流域動態カード(小冊子)では、「微生物が育む豊かな土壌と地下水の動き」「苔むす岩と磐座信仰」「山と海の見えない栄養循環と海底湧水」など、こうした 流域の循環を支える、様々な諸存在の働きや仕組みを図解しています。
<流域動態図カード一覧>
1.日本海の冬の豪雪と時化がもたらす恵み
2.健全な森林植生と雨水浸透
3.大山の地層と植生
4.微生物が育む豊かな土壌と地下水の動き
5.森の腐植が育む豊かな海
6.人の営みと森の更新
7.苔むす岩と磐座信仰
8.石積みや石畳みの知恵
9.たたら製鉄と森林利用(炭焼き)
10.鉄穴流しと棚田(資源循環システム)
11.大山信仰と修験
12.山と海の見えない栄養循環と海底湧水
13.魚付き林と鎮守の杜


流域の再定義
本プロジェクトでは、大山チームの皆様と共に、人の営みも含めた森羅万象が交わり、奥山から里山、川、海へと渾然一体となって積み重なる動的なつながりを「流域/ryuiki」という新たな概念として再定義しました。
「流域/ryuiki」は、単なる集水域(watershedやriver basin)ではありません。人と自然環境が相互作用し合う地理ー気候ー文化ー経済ー生態学的な概念であり、ジオスケールでの地形生成から、土地に伝承される文化・信仰・神話、現在の人の暮らしや経済、一人ひとりの内なる流域性まで多層的な時空間が積み重なる場(フィールド)の最小単位です。
そして、その動態を感受するための身体性や視座を「流域動態感受性/ryuiki awareness」と名付けました。絶え間なく変化し続ける自然界の動的な全体性を感受することであり、自分もまたその森羅万象のはたらきの一部であること(=自らの内に流れる流域性)を自覚し、生きてゆく力です。
流域動態感受性を育み、体感・体得するための大山流域プログラムにぜひご参加ください。

その後の展開:インバンド向け発信・ツールの開発、国際流域フォーラムの開催
流域動態図は現地プログラムでご活用いただいているほか、2025年7月には、patagonia Japanと環境省による「Ridge to Reef プロジェクト」のキックオフカンファレンスの基調講演「流域という視座 つながりのダイナミクス ー大山での試み―/大原徹氏(一般社団法人Bisui Daisen 代表理事)」にて発表されました。

また、海外からも興味・関心を寄せていただくことが多く、インバウンド向けに英語版の流域動態図とカードも制作しています。
インバウンドプログラムでもご活用いただく他、欧州(ロンドン・パリ・ベルリン)にて開催したEcological Memesのグローバルフォーラム・展示会においても、流域動態絵図のプレゼンテーションや展示を行いました。リジェネラティブな時代への移行に向けた、近代文明観(要素還元的機械論、人と自然を切り離す近代二元論など)への抜本的なパダライムシフトへの認識が強まる中、日本の自然観や文化精神性、古来からの土着知への関心は高く、特に「流域」「あわい」などの世界観、哲学思想、事例は反響がありました。日本で体験したいという声も多くいただき、2026年には、国内外からゲストを招聘し、日本の気候風土が生んだ流域の視座と知恵を分かち合う「国際流域フォーラム&体験プログラム」および事前オンライントークイベントを予定しています。ぜひご参加ください。 [事前オンライントークイベント:Ryuiki gathering] ※順次公開 ーApril 22nd (Wed) 12:00 – 14:00 (BST) / 13:00 – 15:00 (CEST) / 20:00 – 22:00 (JST)
Why Water Matters: Re-imagining Human-Nature Reciprocity in the Era of Poly-crisis
水をめぐる力学:複合危機の時代における人間と自然の相互作用性を再考する
Janice Li / Curator (London)
ーMay 22nd (Fri) 13:00 – 15:00 (CEST) / 20:00 – 22:00 (JST)
Multi-Sensory Waters: Re-encountering Urban Watersides as a Space for Interspecies Care
多感覚の水辺:種を超えたケアの場としての都市と流域
Carmen Bouyer / Environmental Artist (Paris)
ーJune 16th (Tue) 12:00 – 14:00 (CEST) / 19:00 – 21:00 (JST)
Ancestral Flows in Japan: Re-activating Animistic Landscape and Awareness in the Layered Archipelago
日本の精神性と内なる流域:積層する日本文化の原風景と感応美を求めて
Everett Kennedy Brown / Artist, Writer (Japan/US)
ーJuly 9th (Thu) 11:00 – 13:00 (BST) / 19:00 – 21:00 (JST)
Decolonizing Leadership Indigenous Wisdom and Regenerative Business as a Songline
水と大地の記憶:先住民の知恵に学ぶビジネスとリーダーシップ
Jannine Barron / Regenerative Business Mentor (UK/Australia)
ーAugust 4th (Tue) 12:00 – 14:00 (CEST) / 18:00 – 20:00 (Bali) / 19:00 – 21:00 (JST)
Regenerating Tourism as a Ryuiki Journey: Ancient Wisdom and More-than-Human Connectivity in Bali
流域に根ざした再生型ツーリズムの可能性を探る:バリの土着信仰と森里川海の連環
Wira / Impact Entrepreneur (Bali)


江府町八幡副町長からのコメント
「大山の南側に位置する江府町は、山頂から海岸線までの距離が極めて短く、水の循環を自分の身体感覚として捉えられる希有な場所です。本プロジェクトを通じて、単なる水の流れというだけでなく、地質や植生、歴史、人々の暮らしが幾重にも積み重なり、その結晶として江府町の『美味しい水』という恵みが現れていることを改めて感じました。
単なる環境保全にとどまらず、この豊かな自然の中で生かされ、社会文化的な活動を行うこと自体に価値があります。そこに身を置くことで心が癒やされ、『明日も生きていこう』という活力が湧いてくる。そんな健やかな循環を目指しています。
『流域』の視点にこだわったのは、従来の行政単位という枠組みを超えていくことができるから。この動態図は、目に見えない大きな繋がりを可視化し、私たちが大きな関わりの中で生きていることを実感させてくれる『新しい学びの道具』となるのではないかと思っています。」

流域動態図は、度重なるフィールド調査や地域の方々へのヒアリングを経て、また、多分野にわたる膨大な研究論文・関連調査などを参照し、得られた洞察をまとめています。
各種フィールド調査や検討を共にしていただいた(一社)bisui daisen の大原徹さん、秋元大さん、mimoriの坂上萌さん、松田彩子さんをはじめ、たくさんの方々のご協力をいただきました。誠にありがとうございました。

Project Creditーーー
Direction: Yasuhiro Kobayashi (Ecological Memes)
Research - Text - Edit:Moe Sakaue (Ecological Memes/Mimori), Yasuhiro Kobayashi (Ecological Memes)
Design : Yusuke Watanabe(Cocoroe, inc.)
Creative Direction:Yasuhiro Kobayashi (Ecological Memes) Special Thanks:Toru Ohara(bisui Daisen), Dai Akimoto(Ryuiki Design Producer), Ako Matsuda(Mimori), Lisa Kirimura(tenrai inc)
【本件に関するお問い合わせ】 お問い合わせ内容・ご相談事項を記載の上、下記までご連絡ください。









































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